ぼやきの場所

使ってるSNSでは気後れする長さの文章置き場。

何度目だよ「無垢の祈り」について書くの

 なんか少し久しぶりに日記をつけるような気がする。書きなぐったものを見返すことに対する羞恥心が人より強い自覚があるので、ブログを見返すことがない。ということで、今書いているこの記事が何日ぶりの更新になるかもわかっていない。ついでに白状すると書くことも特に決まってない。候補はいくつかあるんだけどひとつに絞りきれていない。例によって見切り発車である。

 

 仕方がないので好きな小説の話でもしようと思う。私は基本的にサスペンスだとかミステリーだとかそういうジャンルを好むけど、別にそれしか読まないわけではない。文字であればホラーもグロも割といける。ということで、平山夢明の小説について。有名所だとダイナーとかかしらね。その著作の中に「独白するユニバーサル横メルカトル」っていう短編集がある。表紙がどことなくヒラサワ味あるこの短編集、ぺけで何回か話題に出したことがあるんです。大好きなんですよね。

 そもそもこの本を手に取ったきっかけが、近所の図書館で表紙を見かけたときにタイトル諸々含めて馬の骨感性に引っかかったからでひとまず借りて読んでみたっていう。他の作品を知ってる人ならわかる通り、ナンセンスやら不条理やらという単語がよく似合うお話が多かった。あとは全編通してグロい。さらっとグロ描写が出てくるから段々感覚が麻痺してくる感じ。

 んで、そのなかでも異彩を放っているのが映画化もされた「無垢の祈り」で。私この話本当に本当に大好きで、この短編をいつでも読みたいが為に文庫版を買ったくらい。さらっとあらすじを紹介すると、母親の再婚相手から虐待されて学校ではいじめられて、母親はやばい宗教にハマってる女の子が街を騒がす連続殺人鬼に会おうとする話。境遇は悲惨そのものだけど女の子はめちゃくちゃ負けん気の強い子で、いじめられたらやり返すし母親がやばくても無視してカップ麺用意するような子。その子がとあるきっかけで連続殺人鬼に会うため行動を起こすんだけど、この理由がいじらしい。会って伝えたいことが「がんばってください」なんだよ? きっかけがきっかけだし相手が相手なので自分を取り巻く環境を壊してくれるような想像をしたりも勿論する。それでも伝えたいと思うことがそれ。ヒーローのような存在になっていて、心の支えだったんだなって読んでるこっちにもわかるのですよ。

 で、そのラストが本当に素晴らしくてね。会いたいと希う人が人殺しという時点で所謂ハッピーエンドを迎えるのは難しいと思うじゃない。でもこの話の結末はハッピーエンドだと私は思うの。めでたしめでたし、の先がどうなるかはわからない。けれど少なくとも、めでたしめでたしは迎える。そこから先の未来はどう考えても暗い。でも女の子が今いる場所も明るいとは言えない。だからこそ抱いた無垢の祈りがカタルシスを生むというか、余韻が凄くて読後感最高。色々と好きな小説はあるけど、ここまで心を持っていかれた小説はとても少ないから余計に思い入れが強くなってしまってる自覚はある。

 

 「無垢の祈り」は映画化もされているんだけど、私は断然小説派です。映像化するのがそもそも難しい話だから映画も凄いとは思う。でもお話が最後の最後で原作と分岐するんだよね。この分岐が肝というか、好みの分かれる部分だと思う。ラストのカタルシスと暗闇が続くハッピーエンドで、陰鬱な読後感と爽やかな余韻が好きだったので小説版が好きな人だと映画の改変はきつく感じると思う。逆にそういうの一切必要ないです暗闇でバッドエンド迎えて徹頭徹尾救われないお話大好きですみたいな人からすると小説版は少し物足りないだろうし、映画版の方が好ましく感じるかも。私は断然小説派です(2回目)

 ネタバレてんこ盛りにして好きなところを事細やかに挙げ連ねたいところではあるんだけど、2006年刊行とまだそこまで古い本でもないし自重してる。実は書き連ねたくてうずうずしてる。読んだ人の感想とかひたすら漁ってわかるわかるしてるんだけど、原作が短編集なのでどうしてもすっきり纏められてしまっていたり映画版の方を主に扱っていたりで不完全燃焼を起こしてるのが現状です。感想語り合いたい欲がすごい。なるべく多くの人に読んでほしい気持ちもすごい。

 

 この短編集、他に収録されているお話も全部好きなんだけど「無垢の祈り」が特別すぎるんだよね。メンタルどん底に叩き落されるって意味では「ニコチンと少年」も素晴らしいし、知的なやべえ奴が登場する「Ωの晩餐」「エッグマン」「怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男」も好き。当然だけどそれぞれ違う展開と結末が用意されてるから飽きないよ。この三作の中だったら「エッグマン」の結末が好きです。ディストピアものが読めるなら「オペラントの肖像」も良いと思う。私は好き。

 興味があったら是非読んでみてほしい。そして読んだあかつきには教えてほしい。多分凄い勢いで私が食いつくから。

 

おしまい。